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号泣する準備はできていた

身を切るようにせつない恋愛の本質を的確に描いた小説は、同性同士のそれを題材としたものであることが多い。
男女の恋愛において生じる諸々の現実的事象が、恋愛という不思議な感情の本質を表現しようとする時に邪魔になるからであろう。

江國香織の直木賞受賞作「号泣する準備はできていた」
収録の「熱帯夜」は、そんな純度100%の恋愛小説だった。
千花と秋美のどこにも行き着く先のない恋。

どんなに愛し合っていても、これ以上前に進むことはできない。 たとえば結婚も離婚もなく、たとえば妊娠も堕胎もない。

本当の恋のただ中にいるとき、ぼくたちはけっして世界の中心で叫ぶことはなく、だだっ広い世界の片隅でたった二人だけの異邦人となる。

江國香織の文体は実は苦手なんだけれど、若い女性が憧れるタイプだということはよくわかる。
おもしろいのは、どの物語にも必ずと言っていいほど犬が登場すること。
たしかゴールデンリトリーバーを飼っていたはずだし、相当な愛犬家なのだろう。
先述の「熱帯夜」には犬が登場する気配がないと思ったら、小説の最後がこんな風に締められていた。

マンションに帰ったら、私たちはくっついて眠るだろう。たぶん今夜は性交はしない。 ただぴったりくっついて眠るだろう。男も女も、犬も子供もいる世の中の片隅で。
恋する二人以外の世界の代表的構成員が、男と女と子供とそれに犬だとはなかなか愉快じゃないか。

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